T: Timさん編:編集部

編:「この会社に入って何年になりますか?」

T:「5年になります。」

編:「どうしてこの会社を選びましたか?」

T:「大学を出てから8年間あるメーカーでセールスをやっていました。私の夢はマーケティングをやることで、大学の専攻もそうでした。しかしその会社では45歳まではひたすらセールスを担当させられます。そこで若くてもマーケティングを任せてくれる今の会社に思い切って転職しました。」

編:「思い切って?転職はアメリカでは当たり前のことではありませんか?」

T:「私の父は終身ひとつの会社で勤め上げました。弟も転職の経験はありません。日本人・日本企業の習慣や文化をよく知らないという不安もあり、転職には大きな勇気が要りました。でも、自らの夢だったマーケティングの仕事にぜひチャレンジしたかったのです。」

編:「入社してみて驚いたこと、期待と違ったことはありませんか?」

T:「日本企業では日本人スタッフがローテーションで入れ替わり駐在していきます。せっかく顧客との関係を築いても途切れてしまう、また英語力からしても現地のアメリカ人を採用した方が良い、との反省が会社にありました。だから私も採用されたのでしょう。ところが日本人スタッフと一緒に交代の挨拶に行った最初の顧客は、私に向かって

 

インタビュー:「日本企業に働くアメリカ人」 第2回

Tim Moriarty さん

(Director, Tubular products

Sumitomo Corporation of America)

 

『This is not acceptable!!』と言ったのです。入社初の顧客訪問でですよ!! ショックでした。」

編:「お客さんはアメリカ人でしょう?アメリカ人同士の方がやりやすいだろうのに?」

T:「その顧客は日本人スタッフのきめ細かい仕事振りに満足していましたし、その信頼感は大変深いものでした。日本の文化が大好きで、日本を訪問したことも楽しい経験だったようです。言葉の点では私の方が良いに決まっていますが、常に効率的で正確、期限を守る日本人と彼は仕事をしたかったのです。私は帰ってすぐに上司に進言しました。『会社の考えは間違っていた。現地人スタッフより日本人の方がよかったんだ!!』と。」

編:「この会社に入って最も幸福感を感じたのはどのような時でしょうか?」

T:「入社して最初の日本出張の時です。本社や工場でいろいろな人と会って話をして、自分がとても大きなグループと一緒に仕事をしているのだなと肌でわかりました。自分のマーケティング戦略をプレゼンテーションしたときも、50人の出席者が皆熱心に聞いて、そして納得してくれました。大きなグループとして仕事をし、そのグループが自分を頼りにしている。そう気づいたとき幸福感というか、やりがいを感じました。」

編:「何か仕事上の失敗談がありましたら聞かせて下さい。」

T:「私は石油やガスを採集するために、地中深く10,000ft以上も吊り下げていく油井管というパイプを扱っています。吊り下げていくためにはカップリングというネジ継ぎ手が必要で、油井管のオーダーをもらうと、同時にそのカップリングを作るためのパイプも段取りしておかねばなりません。入社当時、扱う商品に関する知識が十分でなかった私は、そんな当たり前のことも知らなかったのです。初めて自分で受注したパイプがヒューストン港に荷揚げされるので、意気揚々とお客様と検査官を連れて立会いに行きました。

 

 

パイプが無事荷揚げされたのを見て、胸を張って引き上げようとすると、彼らはまだ船の中を見ながら首をひねっています。どうしたんですか、と訊いたら、カップリング用のパイプはどこですか?と訊き返されました。」

編:「どう答えたのですか?」

T「カップリング用のパイプ?何ですか、それ??、と答えたら絶句されました。」

編:「それはお客様にとってたいへんなことだったのではないですか?」

T:「数Million dollarで買ったパイプも繋げなければ何の価値もありません。でも工場と日本人スタッフに助けてもらい、パイプを特急で作って空輸し、なんとか間に合わすことができました。」

編:「飛行機で送ったのですか?! 会社から怒られたのではないですか?」

T:「即刻5週間のトレーニングコースを受けさせられました。」

編:「日本企業の文化について何か意見はありますか?」

T:「日本人スタッフの勤務時間には驚かされます。日本との時差も一因でしょうが、それにしても遅すぎます。夕方5時でもランチタイムくらいの感覚でしょう。」

編:「アメリカ人でも働く人は日本人以上に働いているのではないですか? マイホーム主義者と二分されているのでは?」

T:「よくそういわれますが事実とは違います。アメリカ人で遅くまでがむしゃらに働く人は10%でしょう。彼らは会社のオーナーやトップマネジメントを歩く特別な人たちです。それに見合う高額報酬をもらい、早期にリタイアして自分のしたいことをするのです。でも90%の普通のアメリカ人は、夫婦共稼ぎで家事を分担し、夕食は家族と共にしています。日本人の勤務時間ではこのアメリカ社会で結婚生活を維持することはできないでしょう。」

 

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