ジェトロ 前川 直行(文系)

 

 今更言うまでもありませんが、ヒューストンはエナジーキャピトルとして世界中に有名です。 その知名度は絶大で、全米最大の規模を誇るテキサス・メディカル・センターでさえも勝つことが出来ません。ヒューストンといった瞬間に皆一応に条件反射のように石油、天然ガスのことを思い浮かべるのだと思います。

さて、そうは言うものの、エネルギー関連の企業ばかりがヒューストンにあるわけではありません。中には、小粒ながらもキラリと光る企業が頑張っています。今回は、当地での活動を通じて知り合ったそのような企業をふたつほどご紹介したいと思います。

 

 ひとつ目は、ADVフィルムという会社です。ご存知の方も多いと思いますが、この会社は日本からアニメコンテンツを輸入して、米国で販売している会社です。ギャラリアショッピングモールなどを歩いていると、たまに日本のアニメの絵柄がプリントされているT−シャツを着た人とすれ違うこという経験をされたことのある人も居られるとは思いますが、そのようなマニアに熱狂的に支持されるタイプのコンテンツを扱っています。同社の話では、日本のコンテンツ制作会社の米国子会社を抑え、日本のアニメの販売実績では全米でトップだということです。また、同社は角川書店の「ニュータイプ」というアニメ専門雑誌の米国での翻訳、販売権を持っており、同雑誌の米国における販売実績は10万部に達しているとのことです。この雑誌、日本では30万部売れておりますが、どう考えても、「コア」なアニメファンの絶対数が少ないと思われる米国においてこの数字は、賞賛に値します。

 今年、「千と千尋の神隠し」というアニメーション映画がアカデミー賞を採り、日本のアニメーションの注目度が高まりました。そのためもあって色々な経済誌で日本のアニメーション産業の特集が組まれました。そのなかのひとつの論調として、アニメーションを日本の輸出産業に育てようというのがありました。しかし、その具体策は検討されている様子も無く、またアニメ産業界の方も政府の中途半端な支援と、それがために課せられる束縛を嫌っている雰囲気があります。

 

 

 本当に必要なのは、優秀なクリエータにチャンスを与えるための投資をしてくれる人/機関であって、会社を中途半端に支援しても何もならないと言い切る人もいます。そう考えると、リスクを積極的にとる米国人が日本のアニメーションを引っ張り、優秀なクリエータはどんどん米国に移るという時代がくるかもしれません。そのときヒューストンはアニメ・キャピトルと呼ばれるかも知れません。

 

 次は、ナノテクノロジー関連の企業です。 1996年にフラーレン(C-60)の発見でノーベル化学賞を受賞したリチャード・スモーリー教授により設立されたライス大学のナノスケール科学技術センターからスピンアウトした企業で、名前をカーボン・ナノテクノロジーズといいます。ちなみに、フラーレンとは炭素原子がサッカーボールのような形をした分子です。 余談ですが、炭素とは、その結合の仕方によって、ただの墨になったりダイヤモンドになったりと価値の大きく変わる物質です。 ただ、ダイヤと墨は簡単に見分けがつくのでよいとしても、すすとフラーレンの見分けはつきません。なのに、結構高価なのです。

 それはさておき、このカーボン・ナノテクノロジーズは、フラーレンを引き伸ばして筒状にしたようなカーボンナノチューブを生産している企業です。 いきなり投資を1500万ドル(約18億円)も集めるなど、非常に注目されている会社です。 この勢いで、ヒューストンをナノテクノロジー・キャピトルへと引っ張っていって欲しいものです。ちなみにカーボンナノチューブは、日本人であるNEC主席研究員の飯島 澄男氏により発見されたもので、熱の伝導効率が金属より高く、軽量であるにも関らず強度もダイヤモンド並み、構造によっては金属になったり半導体になったりするなど、信じられないような物質です。でも、見た目はやはりただの「すす」です。

 

 このようにヒューストンにも個性的な企業があります。その中から、次世代のヒューストン経済の一翼を担う企業が生まれてくるかも知れません。私個人としましては、そのような企業の誕生を楽しみにしています。

 

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